ブログ

当事者が誰も得をしないオワハラ行為を今すぐ止めるべき理由(岡崎よしひろ 中小企業診断士)

オワハラ。昨今では何でもかんでもハラスメントの『ハラ』を付ける風潮があるような気がしていますが、これはオワハラなどといった言葉で言ってしまって良いのかな?といった感じの内容です。

日経新聞電子版では

来春卒業する大学生らの就職活動が学生有利の「売り手市場」で進む中、企業が内定や内々定を出した学生に、活動を終えるよう働きかけを強めている。一部では過剰な行為が「終われハラスメント(オワハラ)」などと呼ばれて問題化するケースも。学生の自由選択を妨げれば違法行為となるおそれもあり、文部科学省は今年度、初の実態調査に乗り出す方針だ。2015年5月9日 日経新聞電子版

といったように報道しており、「(就活)終われハラスメント」を略してオワハラと言っているようです。

憲法を持ち出して、職業選択の自由が侵害されている!などと大上段に構えた議論をしなくとも、オワハラ自体、就活生も企業も得をしないような行為であると考えられます。

本稿では、どうして誰も得をしないのかについて考えていきたいと思います。

■一見得をしそうな企業側も実は得をしない

オワハラは企業側が「せっかく内定を出した優秀な人材を他社にとられないようにしたい」といった考えから行うと考えられます。

採用活動には莫大なコストが掛かるといわれていますので、そのような行為を行うインセンティブは常に存在しているのでしょう。

特に、昨今の情勢では就活生側の売り手市場といわれていますので、せっかく確保した内定者を死守したいとの考えが生じるのは無理からぬことだと考えられます。しかし、そのように考えることと実際に行うことには大きな違いがあります。

また、一見すると内定者をつなぎとめることができる訳ですから、企業側はとりあえず得をしていると考えられるかもしれませんが、以下で見ていくように長期的には全く得をしないと考えられます。

■誰がオワハラを推進するか

さて、このオワハラを担当者ベースの判断で行ったと仮定します。この場合、担当者ベースの判断で非常に危うい行為をなされてしまうといった問題があるという事ができます。

昨今では企業が望ましくない行為をするとネット上で情報が拡散し、一気に評判を落とすといったリスクがありますので、採用活動といった重要な活動についてはある程度組織的な対応が取れるような体制を整えておく必要があると考えられます。

もっといえば、担当者ベースの判断で企業の評判を損なう可能性がある行為ができなくないような体制を構築する事が強く望まれるのです。

また、採用担当者にオワハラを行うようなインセンティブを与えていないか考えてみる必要があります。

内定者のうち一定の割合で内定辞退をするのはある意味当然のことですので、ある程度はその内定辞退を織り込んだ採用計画を立てておく必要があると考えられます。

もちろん内定辞退者が出ないに越したことはありませんが、誰も内定辞退者を出さないことを目標とする、内定者数少なく、十分な母集団と言えないにもかかわらず前年比で管理するなど、不適切な目標設定がなされると問題が生じてきます。

そして、もし内定辞退者が一定の割合で発生した際に採用担当者の評価が下がるといった運用がなされているのなら、コントロールできない事象を評価基準にしてはならないというマネジメント上の基本原則が守られていないと言えます。

このような場合、採用担当者の評価基準に問題がないか再検討する必要があると考えられます。

また、オワハラを企業ぐるみで行っているような場合は、「自社は問題のある企業なんですよ」と公言しているようなものです。

このような就活生に対して不誠実な対応であるオワハラを行うような企業文化で、取引先や自社の従業員等の利害関係者に対して誠実な対応を行い続けることができるか。言い換えれば、企業文化の問題が大切な利害関係者の信頼を損なう事につながりかねない事態を引き起こす可能性はないかについて考えてみる必要があると思います。

このようにオワハラ自体、誰が推進したにしても、そのような行為が何の疑問もなく行われているような企業が長期的に得をしないという事がわかると思います。

■オワハラで人材を確保しても

また、このようなオワハラが首尾よくうまく行って、内定辞退者を出さずに済んだとします。しかしながら、人生の岐路にそのようなハラスメントを行った組織に対して、雇用した人が長期的に忠誠心を持って働いてくれるかどうかは甚だ疑問です。

また、「あそこの会社を受けると、別の会社の選考を妨害される」といった悪評が立てば、優秀な人材から敬遠されてしまい、採用活動自体が困難になってくる可能性も生じます。

このように、どちらに転んでも長期的には望ましくない結果になりそうです。

■就活生側が得をしないのは言うまでもありません

さて、もう一方の当事者である就活生について考えてみます。就活生については、人生の重要な選択である就活において、選択肢を狭めることを強要されるわけですから、得をすることは全くありません。

内定を出す条件として他社の選考を断ることを要請されたり、内定後のフォローと称して企業側から(就活生の就活妨害を目的として)必要以上の接触をもってきたりと、不快な思いをさせられることも多いといわれています。

極めつけは、内定辞退を伝えた際に企業側から非常に不快な対応をされる。さらには内定辞退を取り消すよう恫喝されるといった事もあると言われています。

前者二つはまだ内定者をつなぎとめておくといった目的があるので動機は理解はできるのですが、内定辞退者に不快な対応をするというのは、何の目的もなく担当者レベルの単なる感情の発露でしかない、理解に苦しむ幼稚な行為であると考えられます。(採用担当者は対外的に組織を代表しているので、腹に据えかねたとしても、組織にとって得にならない行為は慎むべきです)

ましては相手を恫喝して内定辞退を取り消させるに到っては、まともな大人のすることではないと考えられますし、そのような対応による評判の悪化といったレピュテーションリスクを覚悟してまでやるような事ではないと考えられます。

いずれにしても誰も得をしない行為ですから、オワハラなどといった言葉が定着する前に、このような行為がなされなくなる事が望まれます。

中小企業診断士 岡崎よしひろ

こちらは、シェアーズカフェオンラインに寄稿した文章となります。

関連記事

  1. 採用難の時代、人材不足へ対応するためには技術の活用が不可欠です
  2. ありふれた商品を相場の数十倍、数百倍で売る方法から考える切り口を…
  3. 働き方のルール違反の解決を経営者や組織がもつ道徳観念に頼ってはな…
  4. 翻訳アプリで接客時のデータを収集すれば、接客業で働く人が求められ…
  5. ひとたび沖縄にセブンイレブンが出店されたら、沖縄のコンビニ勢力図…
  6. パナソニックは13万円の扇風機を販売するにあたって勝算をもってい…
  7. JASRACの音楽教室から著作権料徴収によってほとんどの音楽教室…
  8. 内部留保を活用しろなんてご冗談を。賃上げを目指すなら内部留保なん…

コメント

  1. この記事へのコメントはありません。

  1. この記事へのトラックバックはありません。

PAGE TOP