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長時間労働を是正して生産性を向上させるためには社会の覚悟が問われます

長時間労働と聞くと、疲労が蓄積したり、モチベーションの低下に伴う非効率な働き方などにつながるように感じられるため、生産性が低くなるように感じます。

逆に言えば長時間労働を是正して働く時間を短くすれば効率的に働くことができるため、生産性が上がるといった発想にもつながります。

現在、1億総活躍社会に向けて働き方を改革するといった取り組みが行われており、長時間労働を是正するなどの働き方改革を行って、生産性を向上させることができるといった認識が加藤働き方改革相から示されました。

加藤勝信働き方改革担当相は6日、報道各社のインタビューで「長時間労働是正などの働き方改革は、生産性向上を通じて企業側にとってもプラス」との認識を示した。
長時間労働是正、生産性向上で企業にもプラス=加藤働き方改革相 ロイター2016/9/6

報道によると、働き方改革は企業にとってもプラスになるから官民挙げて取り組んでいきたいといったことなのでしょう。

■生産性ってよく聞くけれども
さて、このことについて考える前に、改めて生産性とはどのような考え方であるかをみていきたいと思います。

生産性というとなんだか難しそうな概念ですが、定義自体は単純です。すなわち、「投入量と産出量の比率」を指す言葉です。

例えば同じ100円を稼ぐなら200時間の労働時間を投入するA社より100時間の労働時間の投入で稼ぐことができるB社の方が生産性は高くなります。

また、同じ100時間の労働時間を投入するのなら、100円を稼ぐC社より200円を稼ぐD社の方が生産性は高くなります。

ここで上で挙げたA社、B社、C社、D社の生産性をそれぞれ計算すると

A社=100円÷200時間=0.5
B社=100円÷100時間=1
C社=100円÷100時間=1
D社=200円÷100時間=2

となります。

■働き方改革というからには労働生産性が目標指標となると考えられます
このように、生産性といった考え方はそんなに難しい考え方ではありません。

但し、生産性という言葉は投入量と産出量の比率を指す言葉であるため、何を投入量や産出量とするかによって様々な生産性が考えられます。

どの生産性を示しているかについて明らかにしないと議論を進められないのですが、今回の記事の内容では、『長時間労働是正などの働き方改革をすることで生産性が高まる』と言っているので、労働生産性のことを指していると考えられます。

この労働生産性とは「投入される労働量と産出される付加価値」の比率を示す指標です。これを計算式で示せば

労働生産性=付加価値÷労働時間

となります。

それでは労働生産性を高めるにはどうしたらよいのでしょうか。

答えとしては、労働時間の投入量はそのままで産出される付加価値を増やすか、産出される付加価値はそのままで労働時間の投入量を減らすことがあげられます。

今回の働き方改革は労働時間を減らす方向に持っていくことを狙っているわけですから、産出される付加価値を現状のままにできれば労働生産性は高まることとなります。

■付加価値の産出量低下を覚悟できるか
働き方改革の取り組みは、長時間労働の是正などを行うことで、疲労の少ない状態で働くことができたり、モチベーションの向上等の効果で労働時間を減らすとともに、労働時間当たりの付加価値の産出量を増加させることを目指していると考えられます。

但し、そうはいっても投入する労働時間の絶対量が減少するのであれば、付加価値の産出量の絶対量は減少すると考えるのが自然です。

例えば100円を100時間で稼いでいた企業が働き方改革を行う事で90円を80時間で稼げるようになるようなケースです。

この場合、労働生産性は明らかに向上しています。しかし、最終的な産出量は10円のマイナスとなってしまいます。このときに、最終的な産出量の減少を受け入れることができるかどうか。これが働き方改革が上手くいくかどうかの試金石になると考えられます。

ここで、「やはり従来通り100時間働いて112.5円を稼ぎなさい」などとやってしまっては単なる労働強化ですから元の木阿弥どころか状況はさらに悪くなってしまうでしょう。

また、産出量の低下は受け入れずに単に投入する労働量だけを抑えようとすると、仕事量が変わらないのにノー残業デーを推進するようなことにつながりかねません。

働き方改革というぐらいですから、実質的な仕事量の削減を図りつつ算出される付加価値の低下をなるべく抑えるといった思い切った方策が必要でしょう。

ただ、この場合、社会は働き方改革による産出量の低下を受け入れることができるかどうかが問われます。

■企業は適切な設備投資は行えるか
労働生産性の定義式を分解することで、労働生産性を向上させるための別の方向性を考えることができます。

固定資産を使って上の労働生産性の計算式を分解してみると

労働生産性=付加価値÷労働時間

労働生産性=付加価値÷労働時間×固定資産÷固定資産

労働生産性=付加価値÷固定資産×固定資産÷労働時間

と分解することができます。付加価値÷固定資産は資本装備率を、固定資産÷労働時間は資本生産性を示す式ですので

労働生産性=【資本装備率】×【資本生産性】

と書き換えることができます。このように労働生産性は資本装備率(労働時間に対する資本量)と資本生産性(投下した資本が生み出す付加価値額の割合)に分解することができます。

このように労働生産性を分解してみると、適切な設備投資を実施する事で労働生産性を向上させることができる事が分かります。

■掛け声倒れになるか本当に働き方改革が実現されるかは関係者の覚悟が問われる
このように、働き方改革を実現し労働投入量を減らした場合、社会全体としては最終的な産出量の減少に耐える覚悟が問われます。

また、企業側も最終的な付加価値の産出量の減少を抑えるため適切な設備投資を行う事が求められます。

そして、長時間労働の是正をの恩恵を受けると思われがちな働く人も、生産性を意識した働き方が求められるのです。

中小企業診断士 岡崎よしひろ

こちらは、シェアーズカフェオンラインに寄稿した文章となります。

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