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翻訳アプリで接客時のデータを収集すれば、接客業で働く人が求められる能力が変わります。

日本政府観光局(JNTO)の資料によると、訪日外国人数は2013年1,030万人、2014年1340万人、2015年1,970万人と増え続けています。

つい十年前である2006年の訪日外国人数は730万人だったことを考えると、訪日外国人数は激増と言っても差支えのないペースで増加しています。

そのような外部環境の変化から、国内の商業施設では訪日外国人へのサービスを強化する必要が出てきています。

■言葉の壁を技術で超える
訪日外国人へ対するサービスを強化するというだけは簡単です。しかし、実際にサービスを強化しようとした場合、問題となるのは言葉の壁です。

外国語を駆使して接客ができる人材の確保はなかなか難しいですし、現在働いている人たちが外国語での接客対応ができるようになるためには、膨大な費用と時間をかけて研修等を行わないと難しいでしょう。

また、外国語といっても特定の言語だけでなく、世界中から外国人が訪日している現状を考えれば様々な言語への対応が必要となります。

そこで、IT技術に頼った問題解決を図ろうとする動きが出ています。

三菱地所は28日、商業施設で訪日外国人などへのサービスを強化するため、接客に特化した多言語翻訳アプリを開発し、11月1日に無料配信を始めると発表した。
三菱地所、接客特化の翻訳アプリ開発 時事通信 2016/10/28

上記のように三菱地所が翻訳に特化した多言語翻訳アプリを開発を行い、無料配信を開始するとあります。

この報道に先立ち、三菱地所が2016年2月10日付で発表している報道資料では、丸の内、横浜エリアの商業テナント約1,000店舗で実際に使用し、接客現場の要望を収集ながら翻訳アプリを開発するとのことなので、実務に対応した翻訳アプリになっているのでしょう。

また、同報道資料によると、試用期間で採用されているのは国立研究開発法人情報通信研究機構が開発した多言語音声翻訳アプリであるVoiceTraという多言語翻訳アプリです。

本アプリは、話しかけた内容を基に翻訳を行ってくれるといった音声認識機能を盛り込んでおり、音声認識しその内容を他言語へ翻訳するといった機能を持っています。

音声認識機能を持った翻訳アプリで多言語対応というわけですから、外国語での接客担当者を雇用したり育成するよりも現実的な選択肢なのでしょう。

■翻訳アプリは接客の支援も可能か
今回の事業は翻訳アプリの活用といったコンセプトなので、翻訳アプリが他の言語を日本語へ翻訳し、翻訳結果に従って人が接客することが前提となっています。

このこと自体は言葉の壁を超える可能性がある素晴らしい事業なのですが、一歩進むと基本的な接客の支援を行うことができる可能性が考えられます。

報道資料では

例えば、ファッション関連の商品説明に必要な”千鳥格子”(Houndstooth check)”ゴブラン織”(Gobelin tapestry)といったテキスタイルに関する用語

中略

また、『おもてなしフレーズ』として、お客様をお迎え・お見送りする際の挨拶や会計の際の日常的な接客シーンに役立つフレーズ、災害等の緊急時にも活用できる基本的なフレーズも登録しました。
商業接客に特化した三菱地所グループ オリジナル多言語翻訳アプリが完成「接客音声翻訳」11月1日(火)より配信開始 三菱地所HP 2016/10/28

とあり、実際の店舗から上がった声が、かなりの部分取り込まれています。また、基本的な接客については決まり文句として登録されているようなので、複雑な接客を必要としない顧客に対しては、販売員を介さなくとも対応できるかもしれません。

■翻訳アプリ入手した情報が接客業の仕事を根本的に変えることになりうるか
訪日外国人への接客に活用する場合、言葉の壁を超える必要から、翻訳アプリの支援を受けて接客を行う事に、それほど抵抗感はないでしょう。

そして、音声認識から多言語に対応した翻訳ができるという事は、接客現場で用いられている実際の外国語の質問と日本語での回答の情報を収集することができるという事です。

つまり、接客に特化した開発したオリジナル翻訳アプリを活用していけば、実際の接客業務で発せられた顧客からの膨大な問いと答えを入手することにつながるのです。

すると、接客現場の生の情報を基にした問答が自然に集まってきます。このような情報を活用できれば、Aと聞かれたらBといった基本的な接客を支援できる想定問答を基にしたシステムを構築することが可能でしょう。

想定問答を一つ一つ設定するといった従来型の開発方法でこのような機能が実現するかもしれませんし、機械学習等の技術を用いて蓄積された膨大な接客時のデータを活用した精度の高い接客用のシステムになるかもしれません。

いずれにしても、当面は商品に関する知識など、接客業務を側面からサポートする機能にとどまると考えられますが、接客現場の情報は不可逆的に蓄積するので基本的な接客は任せられる水準まで到達するのはそれほど時間がかからないと考えられます。

そして、そうなれば、接客業で働く人たちに求められる能力が変わってきます。少なくとも接客マニュアルを作成してその通り接客を行うとか、豊富な商品知識を蓄えるといった事の重要性が下がり、臨機応変の例外対応や顧客の問題解決にフォーカスした能力が求められるようになるのでしょう。

中小企業診断士 岡崎よしひろ

こちらは、シェアーズカフェオンラインに寄稿した文章となります。

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