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働き方のルール違反の解決を経営者や組織がもつ道徳観念に頼ってはならない

いわゆるブラック企業の求人をハローワークなどが拒否することができるようになるといった方向になるようです。

報道では

厚生労働省は6日、労働条件が劣悪なブラック企業からの求人をハローワークで拒否できる制度に関し、現行の新卒求人だけでなく、中途採用やパートなど全ての求人に対象を拡大する方針を固めた。同時に、民間の職業紹介事業者もこの制度を利用できるようにする。
ブラック企業求人全面排除へ 民間紹介業者も拒否可能に 共同通信2016/12/6

とされています。

筆者は、ブラック企業をどのように特定するのか、もれなく特定することができるのかといった実務的な問題があるため、この施策自体はブラック企業問題の解決にあまり貢献しないと感じます。

しかし、低コストで採用活動ができるハローワークから締め出すといった取組の方向性は正しいと考えています。

■なぜ企業はブラック企業的な労務管理に陥るのか
さて、このような取組がブラック企業問題の解決に向けて効果を発揮するかについて考える理由を述べる前に、企業がブラック企業的な労務管理をあえて行う動機を考えてみたいと思います。

まず考えられるのは企業側が知らず知らずのうちにルール違反を犯してしまうケースです。労働関係については様々なルールがあるので故意ではなく過失でルール違反を犯してしまう場合もあるでしょう。

知らずにやってしまっているケースです。この場合は最初に従業員や労働基準監督署などの利害関係者から指摘された段階で改める必要があります。

もちろん、知らなかったとしても責任は免れないわけですから、企業の管理者は働き方のルールについて、勉強する必要があるでしょう。

これに対し、ルール違反だと知っているけどあえてブラック企業的な労務管理を行っているケースも考えられます。前者のケースでも自社の労務管理が不適切であることを知った後に改めない場合はこちらのケースに該当します。

これは完全に確信犯的に行っているケースと、改めないといけないのはわかっているけど様々な事情によって改めることができないケースとに分けられます。

しかし、いずれにしても、知っていながらあえて行っているわけですから問題であることには変わりがありません。

■ブラック企業的な労務管理には『うまみ』がある?
知っていながらあえてやっているケースの場合、ブラック企業にNoを突きつけるなどといった理念を企業の外部でどんなに叫んでも改善は望めないでしょう。

なぜならばブラック企業的な労務管理を行えば、本来支払うべき費用を払わずに短期的な利益を最大化することができるため、ルールを守らないことによる『うまみ』が存在してしまうと考えられるためです。

では、本来払うべき費用とはどのようなものなのでしょうか?

例えば、企業が保有している人的な経営資源で対応できる仕事量を明らかに超える量の仕事を受注する場合を考えてみます。この場合、どのような企業であっても、短期的には現在雇っている従業員の残業で対応することとなるでしょう。

そして、一般的な企業の場合、中長期的に仕事量の増加が見込める場合には、従業員を採用して人的な経営資源を拡充したり、社内のプロセスを改善して一人一人が一定時間内に行える仕事量を増やすなどの対応を行っていくこととなります。

仕事量が増加し売上も増加するわけですから、当然必要な費用も増加していくわけですね。

しかし、ブラック企業的な労務管理として、中長期的にも現在雇っている従業員の長時間労働で対応し続ける事も可能です。

このような対応をすれば、従業員の採用や社内プロセスの改善に必要な努力といった様々なコスト負担を表面上は回避することができます。その結果、短期的には(もしかしたら中長期的にも)利益の最大化を達成することができてしまうのです。

このように、積極的にブラック企業的な労務管理を行うにしろ、現状をあえて改めずに温存することでブラック企業的な労務管理を消極的に行うにしろ、本来支払うべき費用を支払わずに事業を営むわけですから『企業の短期的な利益を最大化する』ことにつながると考えられるのです。

もちろん、このような労務管理を行った場合、中長期的には離職率の増加や従業員の士気や生産性の低下といった問題が生じてきます。また、企業の評判が悪くなり採用活動が難しくなる、売上に悪影響がでるといった問題も生じるでしょう。また、法令違反の責任を問われる可能性もあります。

しかし、マイナス面よりも『うまみ』の方が大きいとブラック企業的な労務管理を行う企業が判断するならば、自ら労務管理を改めるといったことはほとんど期待できないでしょう。

■ブラック企業的な労務管理のうまみを無くすことが効果的
さて、ブラック企業問題は根深い問題ですが、あえてブラック企業的な労務管理を行っている企業の動機に着目すると解決策が見えてきます。

それは、ブラック企業的な労務管理を行うことによる『うまみ』を無くすことです。

『うまみ』がなく明らかに損をすることが分かっていながら、あえてブラック企業的な労務管理を行おうとする経営者は、ほとんどいないはずです。また、そのような明らかに損をするような意思決定は株主に対する背任行為になりかねないため、経営者自身の首が危うくなります。

そのため、ブラック企業的な労務管理について『うまみ』を無くすといったアプローチは極めて有効であると考えられます。

■ハローワークから締め出すという取り組みの方向性はとても効果的
ブラック企業の求人をハローワークが取り扱うことを拒否することができるようになるという事は、ブラック企業とされた場合、従業員の採用にかかるコストが増大することを意味します。

その結果、ブラック企業的な労務管理の『うまみ』が減ることが期待されます。

しかし、報道のようにブラック企業は取り扱い拒否といった極端に重い対応だけでは、ブラック企業と認定された場合大きな不利益を被るわけですから、悪質な企業ほど様々な対応を行うことが想定されます。そのため、ブラック企業と簡単に認定をすることが難しくなるため、実際の効果はそれほど発揮されないと考えられます。

むしろ、このような取り扱い拒否という重大な対応だけではなく、何らかの基準を設け、不適切な労務管理が行われている事が判明した企業の求人票に注意喚起の文言を記載するといった比較的軽い対応も併せて行えば、不適切な労務管理を行った場合の採用コスト増加といった効果が広く期待されるでしょう。

このように、ブラック企業的な労務管理を行っている企業について、企業の運営のコストを増やすような方向の施策を打ち出し、法令を遵守していない企業は最終的に損をするといった形のアプローチでブラック企業的な労務管理の経済合理性を奪うことが重要であると考えられるのです。

中小企業診断士 岡崎よしひろ

こちらは、シェアーズカフェオンラインに寄稿した文章となります。

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