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強みの検証という痛みを伴う作業を起業前に実施することができるか

『定年後に趣味の飲食店を始めた人の末路』という記事がプレジデントオンラインに掲載されていました。

記事には、うまくいかなかった理由が明記されていますので、起業を考えてらっしゃる方はリスクを把握するためにも一読されるとよいと思います。

一部引用しますが、以下の部分が起業を考えている方が陥りやすい大きな落とし穴のように考えられます。

パン屋の経営は初めてでしたが、Aさんには勝算がありました。Aさんのお店が提供するパンは、こだわりの厳選した小麦粉を使い、とても風味豊かな本格的なパンです。絶妙な配合で米粉を加え、もっちりしていてとてもおいしいと評判でした。

中略

おいしいものさえ作れば、お客さんは必ず買いに来てくれる――。

定年後に”趣味の飲食店”を始めた人の末路 ノウハウない人が陥った経営の地獄 PRESIDENT Online 2018/6/9

すなわち、いいモノを作れば売れるという信念です。

例えば、私のラーメンは抜群においしいから…とか、手打ちのこだわり蕎麦だから…、焙煎からやっているこだわりのおいしいコーヒーだから…といった感じの言葉を聞いたことがある人も多いと思います。

確かに、そういったこだわりは個人で起業する人が、大手資本と伍していくためには非常に重要な部分です。

しかし、こだわりが強く優位性があれば、立地の不利を覆せると考えるのは、こだわりという優位性を過大評価している可能性があります。

◆強みを過大評価しがち

『人は自らが信じたいものを見てしまう』という趣旨のことを2千年ほど前に古代ローマの将軍カエサルが言っていますが、起業を考えている人はその傾向が強く出てしまいます。

自分が信じたい「自分の持っている強みが有効に働く根拠」をたくさん集め、信じたくない「立地面の弱み等」が問題にならない根拠を探してしまします。

しかし、本当にその強みは自分の起業を成功に導いてくれるものなのでしょうか?一度立ち止まって検証するとよいと思います。

◆検証の方法
と、検証しましょうといきなり言われても困ってしまうと思いますので、検証にあたって一つの枠組みをご提示します。

それはVRIO分析という方法です。この枠組みで、上にあげた『おいしいコーヒー』が本当

まんがで気軽に経営用語による解説はこちら

この方法は簡単に言うと、以下の4つの問いで検証するという方法です。
1 経済的価値が本当にあるのか?
2 珍しい優位性なのか?
3 簡単にまねできないか?
4 組織として活用できるか?

例えば上にあげた『自家焙煎のおいしいコーヒー』はどうでしょうか?

経済的価値については、おいしいコーヒーを提供することで本当にお客さんが多く来るのでしょうか?もしくは、客単価が上がるのでしょうか?

売上は客数×客単価で決まりますので、この要素のどちらかに有利に働かないとそれは自己満足である可能性があります。

珍しい優位性なのかという視点も大切です。「確かにおいしいけど、コンビニのコーヒーと同じだよね…」などと消費者に判断されてしまうなら、それは強みにはなりえませんから。また、おいしいコーヒーを出す喫茶店やカフェが沢山あるという立地の場合は、おいしいコーヒーというのは特に珍しくない要素になってしまいます。

◆マネされない?
これらの経済的価値や珍しさをクリアーしたとしても、簡単にまねできてしまうと意味がありません。

例えば、自家焙煎のおいしいコーヒーのといっても、ちょっとした器具を導入するだけで工夫で隣のお店がマネできるような状態だったらどうでしょうか?

その場合、短期的には優位性があるかもしれませんが、継続的に起業を成功に導く要素ではないということができます。隣のお店にマネされたら、ありふれた強みになってしまいますから。

◆組織として活用できる?
さて、経済的な価値もあり、珍しいしマネもされにくいとなっても油断は禁物です。その強みが組織として活用できなければ意味がありません。

この組織として活用というのはちょっとわかりにくいかもしれませんが、簡単に言うと「お店としての優位性か」ということです。

例えば、自家焙煎のおいしいコーヒーは実は社長の弟が持っている特殊技能であり、弟がお店に来ないときは提供できない技能だったらどうでしょうか?

その場合は、あくまで社長の弟の強みではありますが、このお店の強みということはできないと考えられます。

◆強みの検証は好まれない

と、この辺の強みの検証はあまり好まれない論点です。というのは、若干マニアックな話になりますし、せっかく起業の意思を持っている方の意思に、水を差すような話になるからです。

言い方を誤ると起業を考えている人が怒り出す可能性すらあります。(「それが本当に強みだと思っているんですか?」なんて言い方をされたら、だれだって非常に気分がよくないですからね)

もちろん、強みと思っている面が実はあまり強みでなかったとしても、リカバリーすることは可能です。

しかし、強みがあるかどうかを最初にあらかじめ明らかにしておかないと、方向性を誤る危険性がありますので、最初に痛みはありますが検証していく必要があるのです。

現在のターゲット顧客に対して訴求できる強みがなければ、ないなりの戦略を立てることは可能ですし、そもそものターゲット顧客の変更も起業前なら比較的容易です。

しかし、強みが強みでないことが起業後にわかると、方向転換が非常に大変になりますので。

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